父のはなし

ブログには、どちらかというとどうでもよいような、生活のなかのささいなことを書きたいと思っているのですが、ここ数日があまり平穏でなかったため、なかなか書けずにいました。今もまだすっかり落ち着いているわけではないのですが、今でしか書けないこともあるような気がして、書いてみることにします。

在宅診療を受けていた父ですが、1週間ほど前から、容態が急速に悪化してきて、入院することになり、入院した翌々日の朝に、眠るように息をひきとりました。

がんの影響で、だんだんと食事ができなくなっていたので、最後に会った時の父は、やせ細り、手を貸さなければ起き上がることもできず、声を出すのもやっとという状態でした。父は私の顔を見ると、ありがとうと言ってほほえみ、手を握ってくれました。すべすべとして、あたたかな手でした。わたしには、ただ「生きて」いるだけの父が、輝いていて、尊いものに見えました。

プレゼントしようかと思って買った、「星の王子さま」は、結局渡せないままでした。「大切なものは、目に見えないんだよ」という、有名なフレーズがありますが、父は最後に、いのちという目に見えないものを、わたしに見せてくれたような気がします。